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VOICE magabon interview

No.259 森山未來(俳優)

作品に出演することで抑圧された感情を表現している
その連続で、今の自分があるように感じています

芥川賞を受賞した、西村賢太の私小説「苦役列車」が映画化。西村を思わせる主人公、北町貫多は19歳の日雇い労働者。お金も友も、女もなく、妬みやひがみ、コンプレックスなど負のエネルギーが爆発! どうしようもない孤独や閉塞感を抱えながらも、その自虐的な心情をユーモラスに綴った本書は、作者自身の特異なキャラクターと共に多くの熱狂的な支持者を集めた。
映画において貫多役に抜擢されたのは、森山未來。屈折しまくり、でもどこか憎めない人間像を見事に体現する。メガホンを取るのは、「どんてん生活」(99)、「マイ・バック・ページ」(11)など、青春のもやもやや気恥ずかしさを追いかけてきた山下敦弘監督。主人公の感情や行動を絶妙なバランスで描き切り、愛すべき青春映画として完成させている。
また、貫多が生まれて初めて友情らしきものを育む相手、日下部正二役に高良健吾、貫多が恋焦がれる映画オリジナルヒロイン、康子役に前田敦子と、みずみずしく魅力的なキャストが顔を揃えている。
そこで、森山未來にインタビューを敢行! 難役とも思えるキャラクターへの思い、自身のパワーの源までをたっぷりと語ってもらった。

森山未來

――映画の撮影後に原作を読まれたそうですが、原作の印象はいかがでしたか?
「原作から香る匂いやテイストは、それぞれ読む人によって感じ方が違うとは思うのですが、その中に通っている筋のようなものは、映画でもしっかり残っていると思います。小説では、貫多のひとりぼっちである感じや、行きつ戻りつする内面描写が、ト書きによってきちんと書かれているんですね。なので、そんなに重たい印象は持ちませんでした」

――主人公である貫多の魅力をどう感じましたか?
「演じながら、『いいなぁ』って感じたんです。お金もないし、飯もろくに食えない状況。彼女も友達もいない。そうやって、リスクを負いながら生きているんだけれど、ネガティブなものに覆われてしまっても、隅っこに追いやられてしまっても、ちゃんと生きる強さに変えていく。そのたくましさ、強さを、すごくいいなと思いました。実際、隣にいたらしんどいですけどね(笑)」

――演じる上で大事にした点を教えてください。
「“良い人”とか“悪い人”と言われる人って、どうしてもステレオタイプに描かれがちだと思うんです。ドラマや映画、舞台というのは、ある種、“嘘”というものをみんなで共有していく作業なので、そこに嘘は絶対にあるんだけれど、“良い人”というキャラクターが全てにおいて良いことをしているというのは、どんな物語でもありえない。キャラクターというのは、色んな要素が絡んで出来上がるものだから。やっぱり、それは貫多も同じことで。ダメな男で、世間からは外れてしまっている男だけれど、彼には自分なりの信じる正義がある。劣等感も優越感も、それを持つようになったバックボーンがあってこそ。彼なりに、あくまでもまっとうに生きているという感覚を大事にしたいと思いました」

――数々の個性的な青春映画をつくり上げてきた山下監督が描いたことにより、どのような作品になったと感じますか?
「この作品は私小説ですから、原作者の西村さんは、自分のことをすごくさげすんだ目線で書いているんです。でも、そうでありながらも、こんな風に生きている自分をすごく肯定的に描いている部分があって。僕はただただネガティブな小説だとは思いませんでした。山下監督も、これまでの作品において、世間からずれてしまった人たちを肯定する目線で作品を作っている。そこは、原作者と監督の世界観が一致しているし、響き合った部分がすごくあると思います」



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