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VOICE magabon interview

No.269 岩井俊二(映画監督・映像作家・脚本家・音楽家)

僕のスタイルは学生時代から変わっていません
ある種の自主映画なんです

岩井俊二が「花とアリス」以来8年ぶりに手掛けた長編劇映画「ヴァンパイア」は、カナダを舞台に、全編英語で撮り下ろした野心作だ。本作で、脚本・監督・音楽・撮影・編集・プロデュースと一人6役を務めた岩井監督に単独インタビュー。
本作の主人公は、病身の母親を介護しながら暮らす、孤独な高校教師サイモン。彼が、自殺願望者のサイトで出会った少女たちを、次から次へと死に導いていく。とはいえ、決して残忍な殺し方ではなく、彼女たちの同意のもとで血液を抜き、静かに死へと誘うという特異なやり方だ。そして彼は、ヴァンパイアのように、少女たちの血液を口にする。
サイモンと少女たちの間で生まれる不思議なシンパシーと、変質的な犯罪者の心理を、繊細に映し出した岩井監督。主演を務めた「トランスアメリカ」のケビン・ゼガーズはもちろん、「Silent Hill: Revelation 3D」のアデレイド・クレメンス、「クジラの島の少女」のケイシャ・キャッスル=ヒューズ、蒼井優ら女優陣から、それぞれの個性を見事に引き出した。
岩井監督に、独自のヴァンパイア映画にトライした舞台裏や、物作りの姿勢をたっぷりと聞いた。

岩井俊二

――ヴァンパイアをモチーフに、8年ぶりの長編監督作を撮ろうと思ったきっかけから聞かせてください。
「学生時代に吸血鬼の映画を撮ったことがあったし、元々好きな題材なので、プロになってから必ず1本はやりたいと思っていたんです。最初の原案は『リリイ・シュシュのすべて』を書く前に、少し書いたところで止まっていました。そして5年くらい前に、日本を舞台にしたクライムサスペンスを考え、その時、自殺サイトと連続殺人犯というコンビネーションを思いついたんです。それを進めていったら、よく似た事件が実際起きてしまい、またそこで筆を置きました。そして、『ニューヨーク、アイラブユー』を撮り終わった直後に、向こうのライターさんと日本の犯罪について話していた時、吸血鬼と、連続殺人犯という二つの要素をくっつけたら成立するんじゃないかと気づいたんです」

――実際に起こった犯罪とはどういうものですか?
「ある男が女性に一緒に死のうと持ちかける。その男は、首を締めて、殺されていく人の姿を見るのが何よりも快楽だったようで。世の中にはあまり表に出てこないけど、そういう人たちがたくさんいるわけです。その犯人と、僕が書いていた人物像とは本質的に違ったのですが、実際犯行に至ったってことは、こっちとしても微妙な感じで。その時、自分はなんと因果な仕事をしているんだろうと思いました。もちろん、自分で何かを犯すわけではないけど、クライムサスペンスの物語を考えるってことは、限りなく犯罪者と同じようなことを考えなければいけないですから」

――サイモンと自殺する女性たちの関係性を、どう描こうとしましたか?
「自分が描きたかったのは、人と人との究極のあり方です。自殺したい人がいて、人生最後の日に、死神のような立ち位置の男が現れる。初めて会う人だけど、最後の半日を過ごす間に、愛情みたいなものが生まれたりする。その物語性が僕にとっては極めて魅力的で、これを描いてみたい、またとない題材だと思いました」

――蒼井優さんと久しぶりにお仕事をしてみていかがでしたか?
「相変わらずというか、変わってなかったです。もともと奔放な子ですから。撮影の時、首吊り用のヒモがあって、それを小道具で渡していたんです。ふと見たら彼女、そのヒモで縄跳びをしていて(笑)。それを見て、面白いなと思ったので、彼女が跳んでいるシーンを入れました。小道具とはいえ、首を吊るためのヒモなんだけどなあって思いながら(笑)。でも、今回の彼女は、海外のキャストと一緒に外国で堂々とやってくれていたので、頼もしいなって思いました」



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