現在位置は
です

本文です

VOICE magabon interview

No.32 桑原茂一(選曲家、音楽プロデューサー)

僕は、お金を出しても買えない価値を、“フリー”と呼んでいるんです。
これからの雑誌にも人にも必要なのは、総合力だと思います。

80年代に一世を風靡したユニット「スネークマンショー」、東京・原宿の伝説のクラブ「ピテカントロプス・エレクトス」のプロデューサーであり、日本のクラブカルチャーに多大な影響を与え続ける桑原茂一。彼が編集長を務めるフリーペーパー「dictionary」が、2008年に創刊20年を迎えた。dictionaryはフリーペーパーという形態ながら、坂本龍一、茂木健一郎、竹中直人といった豪華な著名人が毎号参加し、雑誌業界の中でも一種独特な存在感を放っている。今回は桑原茂一にインタビューを敢行し、本誌を創刊することになったきっかけ、さらには雑誌業界全体が目指すべき未来について語ってもらう。

桑原茂一

――「dictionary」創刊のきっかけは?
「1987年くらいからだったでしょうか。海外のクラブシーンで人気のあるDJやダンスチームを呼んで、日本でクラブカルチャーを広めようとしていたんです。でも、日本のメディアはクラブカルチャーについて何の知識もなく、もうすでに人気のあるアーティストしかとりあげてくれない。dictionaryを作ろうと思ったのは、クラブカルチャーを伝える自前のメディアを持つ必要があると気づいたからです」

――その方法を、フリーペーパーにしたのは何故ですか?
「僕らがフリーペーパーとしてdictionaryを作るということは、フリーでなくては言えないことを言い続けるためであり、“お金を出せば何でもできる”ということに対するアンチテーゼなんです。フリーペーパーだからといって、『タダでもらえてラッキー』というものでは決してありません。僕は、お金を出しても買えない価値を、“フリー”と呼んでいるんです。といっても、雑誌として作る以上お金はかかるわけですが、dictionaryが続けていられるのは賛同してくれる人や企業のサポートのお陰だと思っています」

――ポッドキャスト番組の配信、イベント企画などもやられていますが、紙メディアとしてのdictionaryを出し続ける理由は?
「紙の持っている伝達力に独特の魅力を感じるからでしょうね。例えば雑誌を別の形に置き換えたとしたら、読む行為は同じでも伝わり方が違ってくると思います。僕はいわゆる雑誌フェチというタイプではないけれど、雑誌とDJは似ている部分があるんですよね。選曲した音楽をパーツごとに構成して、それを別の音楽にすることがDJの仕事じゃないですか。雑誌もそうだと思うんですよ。“一冊の中に色んな情報が構成されて置かれている”という状態がクリエイションであって、それは作品と言ってもいいと思います。雑誌にはそういう楽しみ方があるんじゃないですか」


現在位置は
です